米政府、イスラエルに弾薬を緊急売却 議会手続きを省略

【ワシントン=中村亮】米政府は9日、イスラエルに戦車搭載の弾薬を売却すると発表した。緊急性が高いと判断し、売却に必要な議会の手続きを省く異例の措置を講じた。与党・民主党から反発が出る可能性がある。

国防総省傘下の国防安全保障協力局は声明で、戦車搭載の弾薬1万3981発の売却を承認し、8日に議会に通知したと明らかにした。総額を1億650万ドル(約154億円)と見積もった。

声明によると、ブリンケン国務長官は議会に対して「イスラエル政府に武器を直ちに売却しなければならない緊急性がある」との立場を示した。武器輸出管理法が定める議会の売却承認手続きを省略すると表明した。

米陸軍の在庫から弾薬を引き渡す。声明は「米国はイスラエルの安全保障を約束しており、支援を通じてイスラエルが強力かつ即応性の高い自衛能力を取得して維持することは米国の国益にとって極めて重要だ」と断言した。

バイデン政権は議会手続きの省略に踏み切り、イスラエル支援を堅持する姿勢が鮮明になる。国連安全保障理事会は8日、パレスチナ自治区ガザでの即時停戦を盛った決議案を採決。米国が拒否権を行使し、否決となっていた。

米議会では民主党のリベラル派を中心にイスラエル軍によるガザ侵攻に批判が強まっている。侵攻がガザ南部に広がり、民間人の死傷者が増えているためだ。イスラエルに軍事支援を続けるバイデン政権に対しても不満が高まる。

米メディアによるとリベラル派の代表格であるバーニー・サンダース上院議員(無所属)は12月上旬、イスラエル軍による米国の武器使用などに条件をつけるべきだと訴えた。米国の武器が死傷者拡大につながっているとの懸念を映す。

バイデン政権はイスラエルウクライナ支援に向けた追加予算案の可決を議会に求めている。民主党で予算案への賛成条件として、イスラエルの武器使用を制限するよう求める声が強まるシナリオが考えられる。

バイデン氏は7日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話協議した。民間人を保護したり、人道支援拡大に協力したりするように重ねて要請した。国内のリベラル派などの批判をかわす狙いがあったとみられる。

武器売却をめぐり、トランプ前政権も2019年にサウジアラビアアラブ首長国連邦UAE)向けで議会の手続きを省略すると通告したことがある。議会承認が難しいと判断し、例外措置を講じて売却を優先したとの批判が広がった。
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